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2020.4.28

[変わる学び 第2部 どうなる?どうする?新学習指導要領]8 主権者教育(公共) 政治参加意識高める 公正中立な指導に難しさ

 「10月に長岡市長選がある。自分たちのまちがどうなるのか、考えてみてほしい」。2月、正徳館高校(長岡市)の2年生約30人に、小林真也教諭(34)がこう問い掛けた。
 新学習指導要領により2022年度の新入生から導入される、公民の新科目「公共」の模擬授業。18歳以上への選挙権年齢引き下げを受け、若者の政治参加の意識を高める主権者教育に重点を置く。
 授業のテーマは長岡市の人口減少について。生徒たちは、同市の合計特殊出生率や地元就職率の低さ、事業所数の減少などについて書かれた新聞記事を読み、グループごとに対策を考えた。生徒からは「企業の子育てサポートが少ないのでは」「都会より魅力的な就職先が少ない」などの課題が上がった。
 授業を終えた生徒は「人口減少は人ごとみたいに思っていた部分もあったが、身近な問題として考えることができた。市長選のときは18歳になるので、投票に行こうと思う」と語った。
 小林教諭は「授業を通じて、物の見方や考え方を習得してほしい。当事者意識を持ち、自分で判断できる力を養うことを目指している」と説明する。

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 これまで公民分野の「現代社会」「倫理」「政治・経済」は選択必修科目だったが、22年度からは「公共」が必修科目となり、「倫理」「政治・経済」は名称を維持し内容を再編する。公共は法律や政治、経済など幅広いテーマを扱い、情報を正しく読み取る力「メディアリテラシー」の育成も目指す。
 小林教諭はこれまで、死刑制度や出生前診断、身近な問題として考えてもらうため部活動の予算配分を題材にするなど、主権者教育に力を入れてきた。
 しかし、そのテーマを選ぶのは簡単ではない。文部科学省が、主権者教育を行う教員に「個人的な主義主張を述べることは避け、公正かつ中立な立場で生徒を指導する」ことを求めているからだ。
 偏った意見のみを教えられないため、さまざまな主張を紹介しなくてはならず、小林教諭も「特定の政党だけを取り上げることはできないし、資料を集めるのに時間が掛かる」と話す。
 また、進学校では受験指導で知識の習得に重点が置かれるため、公共が求めている主権者として必要な資質を育む授業に時間を割けるのか、懸念する声もある。
 総務省の主権者教育アドバイザーで、新潟大創生学部の田中一裕准教授(58)は「受験が重視されれば、学ぶ知識に偏りが出てしまう可能性がある。知識と自分で考える能力をバランスよく習得することが大事だ」と指摘する。

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 実際の投票率にどう結び付けていくかも課題だ。
 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられた16年の参院選で、新潟選挙区の18、19歳の投票率は40・85%。全世代の59・77%を18・92ポイント下回った。
 県選挙管理委員会は現在、投票率アップを目指し高校で出前授業を開くなど啓発活動に力を入れる。公共の授業によって若者の政治参加は進むのか-。同委員会の担当者は「若者の投票率アップは長年の課題。効果がどこまであるかは分からない」と打ち明ける。
 田中准教授は「自分の生活と政治がつながっていることを感じることができれば、関心を持つきっかけになる。将来的には議員を目指す若者が増えてほしい」と期待している。

 

2020年4月15日

 

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