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2020.4.26

[変わる学び 第2部 どうなる?どうする?新学習指導要領]7 高校国語 文学離れ加速の懸念 情報化背景に“実学重視”

 昨年、湯沢町の作家橘善男さん(71)から、本紙窓欄に「国語から文学の削減懸念」との投稿が寄せられた。2022年度の新入生から適用される高校の新学習指導要領で、文学を学ぶ機会が大幅に減る可能性について警鐘を鳴らす内容だった。
 「文学的素養を育む機会を奪い、人として重要な感受性が十分育成されないのではないか」と橘さんは訴えた。埼玉県や神奈川県で30年以上、高校の国語教諭を務めた橘さん。自身も芥川龍之介や夏目漱石らの作品に触れたことが「生きる基盤になり、勇気を与えてくれた」という。「国語は言葉を学ぶだけでなく、感性や情緒を育む場。新学習指導要領は、ぬくもりのない機械的な人間を育ててしまう」と危惧する。

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 今回の高校国語の変更は、情報化社会や子どもの読解力低下を背景に、実生活で役立つ国語の理解力や表現力を育むことが目的だという。
 新要領には「情報の扱い方」がテーマとして盛り込まれ、必修の「国語総合」は論理的な文章や資料の扱いを学ぶ「現代の国語」と、古典などの「言語文化」に分割。選択科目の「現代文」も、実用文を扱う「論理国語」と「文学国語」に分けられる。
 本年度に始まる大学入学共通テストのプレテストで、生徒会の部活動規約をテーマにした実用的な問題が出たため、選択科目では多くの高校が「論理国語」を選び、「小説など近現代文学を扱う時間が減る」との臆測が広がる。日本文芸家協会は昨年1月、“実学重視”の国語改革に対し「日本の将来にとって大変に重要な問題をはらんだ喫緊の課題」と反対声明を発表した。
 県内でも動揺は広がっている。新潟青陵大(新潟市中央区)の読書サークルの学生(21)は「小説で語彙(ごい)力は高まるし、想像力も付く。実用性重視というけれど、小説だって実用的なのでは」と残念がる。

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 子どもの活字離れは深刻化している。全国学校図書館協議会などの19年調査では、1カ月間の平均読書冊数は小学生が11・3冊、中学生は4・7冊、高校生は1・4冊。読んだ本が0冊の児童生徒の割合は高校生で55・3%に上る。高校国語の変更は、文学離れをさらに加速させるのではないかと懸念されている。
 会員制交流サイト(SNS)などで短文のコミュニケーションが広がる中、県内高校のある国語教諭は、長文を読むのが苦手な生徒が年々増えていると感じている。「評論以上に行間を読む必要がある小説は苦手。まして近代文学は言葉や展開に付いていけない」
 一方、教員が一方的に解釈を伝えることが多かった国語の授業に、「結論ありきで価値観の多様性が狭められてしまう」と改善を求める専門家も少なくない。
 このような懸念に対し、県立新潟高校(新潟市中央区)では生徒が主体的に学ぶ国語の授業に取り組んでいる。太宰治の「富嶽(ふがく)百景」などを題材に班ごとでストーリーや心情の変化を発表したり、疑問点を挙げて討論したりする。さらに毎朝、始業前の10分間に「朝読書」を実施。国語の授業をきっかけに興味を持った作家の小説を読む生徒もいるという。
 国語を担当する押木和子教諭(53)は「この改訂で、小説の面白さや近代文学の素晴らしさに気付かずに終わる子どもがさらに増えかねない」と不安視する。「子どもが主体的に小説に触れてほしい」。新要領が導入されてからも、近代文学を教材に、小説を論理的に読む方法を伝えるつもりだ。

2020年4月14日

 

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