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2020.4.25

[変わる学び 第2部 どうなる?どうする?新学習指導要領]6 道徳教科化 成績付けに不満の声 価値観強制しない工夫も

道徳の授業は既に変わっている。2020年度から順次始まる新学習指導要領の実施に先立ち、18年度に小学校、19年度に中学校で、成績が付く教科に“格上げ”された。「考え、議論する道徳」を目指して学校現場が工夫する一方、「価値観の強制」についての懸念も依然くすぶっている。
「この人と合わないなって思った時はある? 先生はあるよ」。昨年末、南魚沼市立上関小学校の道徳の授業。貝瀬梨香子教諭(40)が6年生に問いかけた。
題材は調和を重視するサーカスのリーダー・ピエロと、自分勝手だが人一倍努力をするブランコ乗りのサムが、ぶつかり合いながら友情を育む物語。実社会でも起こりうる内容だ。
ぎくしゃくする2人の行動に、「どっちが悪い?」と貝瀬教諭は尋ねる。どちらも悪いと考える子に理由を聞くと、「どちらも目立ちたいのでは?」「どっちもどっちだと思う」と次々に意見が出た。
教科化で危惧されたのは、国による価値観の強制だ。「教員が『こう言わせたい』と決めつけて授業をすると誘導になる」と貝瀬教諭。児童が発言しやすい雰囲気づくりを心掛ける。
一方で依然、悩みを抱える教員もいる。40代の教員は「自分の価値観と違う反応が出た時、どう取り上げればいいのか悩む。違うとも言えないし、無視もできない…」と打ち明ける。

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教科化の狙いは授業の質と量の画一化だ。「教科化前の道徳は、教員によって指導に温度差があった」と元教諭は打ち明ける。道徳の時間に生徒指導など他の授業を行う先生も多かったという。
そもそも道徳はなぜ教科になったのか。契機は、11年に大津市で起きた男子中学生のいじめ自殺。第2次安倍政権時の13年、教育再生実行会議が教科化を提言した。
しかし、安倍首相の意向をくんだとの指摘は根強い。新潟市で講演した元文部科学省事務次官の前川喜平さん(65)は、第1次安倍政権時に教育基本法が改正され、「愛国心」が盛り込まれた点などを挙げ、「安倍首相が掲げる『美しい国日本』を大事にするのが、日本人の務めだと考える人が推進した」と語る。
指導項目には「国や郷土を愛する態度」が含まれる。前川さんは「道徳の教科書には個人の尊厳についての記述はほとんどない。戦前の国体思想につながり、非常に危険」と危惧する。

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道徳をどう評価するのかという点も大きな問題だった。しかし、多くの教諭が「他教科のように数値化しないし、子どもの考えの善しあしを測るものでもなかった。当初懸念していたほどではなかった」と話す。
通知表には「『これが大切だ』と思うことを多く見つけることができるようになりました」「自分と登場人物を重ねて考えました」など、子どもが成長した部分を短文で書くのみだ。
受験にも反映されず、道徳の評価を見過ごす保護者も少なくない。しかし、教員側はその評価に頭を悩ます。ある小学校の中堅教諭は「道徳の評価には時間が掛かる。いい格好をする子どももいるし、成績は割り切って付けている」と複雑な表情を浮かべる。
授業数(原則年間35コマ)は以前と変わらず、増えたのは教員の多忙化につながる成績付け。中堅教諭はこう漏らした。「そもそも道徳に評価はなじまない。教科化にどこまでの意味があったのか」

2020年4月10日

 

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