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2020.1.24

[変わる学び 第1部 迷走大学入試]7 インタビュー 南風原朝和・東大名誉教授 何を測る議論不十分 受験で4技能育成は誤り

英語の民間検定試験や記述式問題の導入が見送られた大学入学共通テスト。入試改革ありきで本当に何が必要かという議論が不十分だったと指摘する、テスト理論の専門家で新潟大での勤務経験がある南風原朝和・東京大名誉教授(66)に、迷走した改革の問題点を聞いた。
-2020年度(21年1月実施)の共通テストで導入予定だった、英語の民間試験が見送られました。
「そもそも民間任せにすることに無理があった。7種類ある試験のどれを受けてもよいというのでは何人受けるか分からず、民間側も会場の確定ができない。崖っぷちで止まってくれたという感じだ」
-共通テストで英語の「話す」「書く」を含む4技能を測る必要はありますか。
「4技能は各大学が2次試験で測ればいいのではないか。それに、大学側も入試に頼るのではなく、入学後に4技能を教育することが必要だ。『読解は得意だが、話すのは得意ではない』という学生を入り口で落とすのではなく、大学で力を伸ばしてあげるべきだ」
-「大学入試が変わらなければ高校教育が変わらない」との指摘もあります。
「そもそも高校の学習指導要領で英語4技能は重視されている。本来なら高校の教育でしっかりやるべきだ。授業でやらず入試で実力を測るのは、大学に進学しない生徒は学ばなくていいのかということになる。入試で何とかすればいいという考え方が間違っている」
-知識だけでなく思考力や判断力、表現力を測ろうという考え方に賛成する声もあります。
「人は知識を使って思考や判断をする。知識と思考力や判断力を分けて考えることはできない。知識偏重からの脱却という主張は、暗記するだけの知識のことを言っているのだろうが、質の高い生きた知識がなければ、そもそも思考や判断、表現はできない」
-記述式は「採点にばらつきが出るのではないか」などの懸念がありました。
「50万人が参加する共通テストでは無理だろう。そもそも採点基準をどうするのか。採点には1万人が必要とされるが、正確に採点できる優秀な人をそれほど集められるのか。採点の問題点についての議論が十分にされてこなかった」
-共通テストまで1年を切った今も、どのような内容になるのか確定していません。
「英語の話す力を共通テストで測る必要があるのかについても、いろいろな意見がある。新しい入試制度をどう作るかという前に、そもそも大学入試で何を測るのか、その検討を十分すべきだった」
「一部の政治家が『日本人がしゃべれないのは英語教育と入試が悪い』と発言し、経済界から『入試にTOEFLを』との主張があり、この流れができてしまった。大学や高校側の意向を十分検討せず、短期間で英語民間試験や記述式問題の導入を決めてしまった。これまでの審議過程に問題があり、2020年度の実施にこだわる必要もなかった」

<はえばら・ともかず> 1953年生まれ。東大教育学部卒、米アイオワ大大学院博士課程修了。新潟大教育学部講師(82年)、同大助教授(83~93年)、東大副学長などを経て現職。専門は心理統計学やテスト理論。

2020年1月21日

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