子育おすすめ記事

2020.1.23

[変わる学び 第1部 迷走大学入試]6 企業の視点 入学してからが大事 「知識も大切バランスを」

英語教育の改革は文部科学省の「英語教育の在り方に関する有識者会議」委員である、楽天の三木谷浩史会長兼社長ら、経済界の強い要請で進められてきた。
読解中心の学びから、「話す」「聞く」など英語4技能の育成を充実させる試みだったが、大学入学共通テストでは民間検定試験の導入が見送られた。県内の関係者からは「入試を変えることだけに力を注いだから、うまくいかなかったのでは」との声が出ている。
中越地方の外資系企業で海外との商談などを担当する前田和由さん(37)は、大学入試を変えれば全てがうまくいくというような動きに違和感を覚える。
「将来社会でどのように英語を活用したいかを考え、そのために大学で何を学ぶかを考え、その上で入試の形を検討すればいい」と前田さん。英語で世界が広がる楽しさを知っているだけに、大学入試改革の迷走は順番が逆のようで、残念に思う。

■   ■

これまでの知識偏重を改め、思考力や判断力を評価する大学入試改革。しかし、社会に出てさまざまな判断をするには知識も大切で、企業側はバランスの取れた人材を望む。
コロナ(三条市)の人事担当者は「何をやるにも知識は必要。その上で協調性を生かしてチームで課題を解決したり、主体性や自主性を持って自分で考えたりする人材が求められる」と語る。
インターンシップ(就業体験)に参加する大学生も、就職活動を控え知識の大切さを実感する。昨年12月、新潟市の中央区役所で、新潟大学創生学部3年の山岸陽華(はるか)さん(20)=新潟中央高卒=が、若手職員と新潟市の将来像について語り合った。
「地元のことを知っていたから話が弾んだ」と山岸さん。高校時代の受験勉強とこれまでの大学での学びを振り返り、「課題を考えて意見を交わすには、基本的な知識がいると感じた」
教育や受験に関する評論でも知られる医師の和田秀樹・国際医療福祉大大学院特任教授は「ゆとり教育以前の日本の詰め込み型教育は、知識を得るためには良かった」とし、入試改革よりも大学教育の改革の重要性を強調する。

■   ■

県内の産業界も大学の意識改革を求めている。長岡市や周辺の企業でつくるNPO法人「長岡産業活性化協会NAZE」会長の小西統雄(もとお)さん(72)は「大学側が学生の能力を進学後に伸ばせなければ、入試だけ変更しても良くはならない」と訴える。
厳しい受験勉強を経験した学生を社会で活躍させるにはどうすればいいのか。小西さんは「新潟県には世界最先端の技術を持っている企業が多いが、工学が専門でも地元企業をほとんど訪ねない先生もいる。もっと大学は現場へ入り込んでほしい」と大学側の意識改革を期待する。
NAZEは企業と大学の連携事業に取り組む。長岡技術科学大学の教員らが関わるなど「積極的に地域へ出てくる先生も増えた」と、ここ数十年で大学の変化も感じている。「大事なのは大学に入った後。大学で何を学ばせるかだ」

◎有識者が問題視

2014年に始まった「英語教育の在り方に関する有識者会議」では、国際化が進む社会の中で、現状の大学入試の内容を委員の三木谷浩史氏が問題視し、英語能力試験TOEFLに一本化すべきだと主張した。
TOEFLは、かつて入試への全面導入が検討されたが、難易度が高く実力差を測りにくいなどの指摘があり、実現しなかった。
大学入学共通テストでは、TOEFLのほか、英検やベネッセが運営する「GTEC」など6団体7種類の英語民間検定試験を活用することになっていたが、家計の状況や居住地で不利が生じる可能性があることから導入は見送られた。国は1年をかけて抜本的に見直し、現在の中学1年生が受験生となる24年度の導入を目指す方針。

2020年1月16日

 

記事一覧に戻る

記事一覧

今ならトライアルセットを無料でお届けします!

トライアルセットを申し込む

新潟日報の購読を申し込む