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2020.1.10

[変わる学び 第1部 迷走大学入試]2 記述式問題 民間任せ募る不信感 「採点ミスは人生を左右」

「これが国語の問題?」-。大学入学共通テストの記述式のモデル問題は、駐車場の使用契約書を題材にしていた。北越高校(新潟市中央区)で進路指導を担当する手島芳博教諭(60)は、ひっくり返るほど驚いたという。
これまでは小説などを使った問題が主流だったが、契約書の内容を読み取り、起こり得るトラブルの解決策を考えるものだった。「実用的な文章を読む力が求められていると感じた」
記述式問題は、受験生の思考力や表現力などを評価する狙いがあった。しかし、通信教育大手のベネッセコーポレーションのグループ会社が採点を引き受け、学生アルバイトを含む8千~1万人が短期間で作業するという計画に、公平性や採点ミスなど数々の問題が指摘され、見送られた。
記述式問題では採点のぶれを少なくする工夫が見られた。解答に「書き出しを『確かに』から始めること」などの条件が設けられていた。
「条件が多くなれば、個性のある解答は期待できない」と手島教諭。自分の考えを言葉で伝える力は重要だと思っているだけに、この形では本来の意義から遠くなると感じた。だが、表現力を重視すれば採点は難しくなる…。課題が解決されないまま強行導入されなかったことに「ほっとしている」。

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採点の委託など、大学入試を民間に任せる国の姿勢に、不信感を募らせる教員や受験生は少なくない。
新潟市内の高校教諭は「数学の記述式問題では、複数の方法で答えを導き出せた。バイトの採点者ですり合わせが可能なのか」と疑問視。新潟市西区の高校2年の女子生徒(17)も「私たちは1点、2点の差で落ちるかもしれない。採点ミスで人生を左右されたくない」と打ち明ける。
新潟日報社のアンケートでも、英語の民間検定試験を含め厳しい意見が寄せられた。「民間と政府の癒着を感じ不愉快だった」と新潟市の50代女性。同市の40代女性も「民間の参入は教育の平等性から乖離(かいり)している。メリットが無ければ企業は取り組まない」と訴えた。
ベネッセが共通テストの関連業務を受注している事実を示し、高校関係者向けに自社サービスを紹介する会合を開いていたことが国会で問題視された。県内のある高校教諭も、ベネッセの担当者から生徒向けの記述式対策の冊子を渡されたという。同社の模試を申し込んだ人だけがもらえるものだった。「グループ会社が採点するのに…」。信頼性に疑問を持った。

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一方、大学入試に関し、学校側も民間に頼らざるを得ないのが実態だ。
新潟市のある高校では12月、高校2年生の保護者を対象にした大学受験制度の説明会が開かれた。説明したのはベネッセの担当者。記述式の導入問題で揺れていた時期だったが、そのことに触れることはほとんど無く、参加した40代女性は違和感を持ったという。
女性は「情報がある企業が説明するのはいい。悪いのはこんなに民間任せにしてきた国」と話す。「不安な思いをするのは今の高校2年生だけでもう十分。これからの受験生に同じ思いをさせないでほしい」

◎実生活がテーマ 思考力探る狙い

大学入学共通テストの記述式問題は、従来のマークシート形式よりも、より受験生の思考力などを評価する目的があった。
共通テスト導入に向けた試行調査や記述式のモデル問題では、日常生活の場面を扱った問題が出された。国語では生徒会部活動規約、駐車場使用契約書、街の景観保護ガイドラインなどが題材だった。
採点の方法を巡っては、50万人分の答案を短期間でミスなく評価できるかといった懸念が相次いだ。また、記述式では自己採点と実際の採点の一致率が低く、受験生が出願先を決めにくいことも大きな課題だった。さまざまな問題点は解決されず、昨年12月、導入の見送りが発表された。

2020年1月8日

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