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2019.9.19

「高校国語」新指導要領 文学減り、育つか思考力 社会での論理・実用に力点 研究者らの異論相次ぐ

全国の高校で、2022年度の新入生から適用される新学習指導要領の国語教育を巡り、懸念の声が出ている。実用性重視に転換し、文学を学ぶ機会が大きく減るとみられるためだ。研究者らは「多様な価値観に身を置くことができる文学の軽視」と反発している。

「国語教育の将来」をテーマに8月、東京都内で開かれた学術シンポジウム。東京大の安藤宏教授(近現代文学)は「大きな危機感を感じている。なぜ(国語を)論理と文学、二つに振り分けるのか」と訴えた。
今回の改革で高校国語は、実用的で論理的な文章を扱う科目と、文学的な文章を教材とする科目とに分かれる。文部科学省の大滝一登視学官はシンポで、これまでは「教材の読み取りが指導の中心だった」と分析。今後は、実社会で必要な国語の知識や技能を育てるために、話し合いや論述などに重点を置くと述べた。
実用系で新設されるのは、必修科目が「現代の国語」、選択科目が「論理国語」。教材として、前者は小説や詩歌などを使わず、後者も論説などを想定しているという。大滝視学官は「小説の登場人物の心情を理解してどうするのか、学ぶ意義が分からないという人もいる」と指摘した。
シンポでは文学研究者らから異論が噴出。安藤教授は「(国語教科書の定番の)小林秀雄の『無常という事』や谷崎潤一郎の『陰影礼賛』などは取り上げられないのか。文学かどうかの判定に、行政が関わる怖さも感じる」と発言した。
改革批判の端緒となったのが、日本大の紅野謙介教授(日本近代文学)が昨年刊行した「国語教育の危機」(ちくま新書)だ。同書は、新指導要領の考え方を具体化した例として、20年度に始まる「大学入学共通テスト」の試行調査として17年に行われた国語試験などを綿密に検討している。
これらの試験で、統合的な思考力を問うのに使われた素材は景観保護のガイドラインや駐車場の契約書、高校の部活動規約などだった。紅野教授は「著者名もなく、単純化された文章や資料を並べ、表面的な情報処理をすることが『統合的な思考力』につながるのか」と疑問を投げ掛ける。
入試で実用的な文章が重視されれば、授業でも「論理国語」を選択する進学校は増える。近現代文学は全科目の中での比重も低くなり、学ぶ機会が減るのは確実-と紅野教授は危惧する。
「芥川龍之介の『羅生門』をとっても、下人は老婆と出会い、その論理を取り込んだことで変化していく。テキストにある人間の矛盾や葛藤、さまざまな価値観や考え方、その一つ一つにアプローチするのが文学を国語で学ぶ醍醐味(だいごみ)ではないのか」

◎必修や選択、大きく変化

新しい学習指導要領の高校国語では、現在は主に高1の必修科目の「国語総合」が、「現代の国語」と「言語文化」の二つに分けられる。「言語文化」の科目では、上代から近現代にかけて受け継がれてきた広い範囲の文学をひとまとめに学ぶことになり、近代以降の文学に充てられる授業時間は大幅に減るとみられている。
選択科目は、これまでの「現代文A」「現代文B」などに替わり、各4単位の「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」の4科目で構成。新しい「国語表現」は、現行のものより1単位増え、スピーチやディベート、企画書や報告書を作成する学習を想定。情報処理や実務的な内容を重視している。

 

2019年9月18日

 

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