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2019.9.6

京都精華大の総合教育 時代に即した漫画家へ 画力から発想力まで養う

大英博物館で開かれた漫画展が反響を呼ぶなど、海外からも高く評価される日本の漫画。その漫画大国で異色のマンガ学部を持つのが京都精華大だ。日本初のマンガ学科開設から今年で20年目。画力から発想力まで、漫画家に必要な力を総合的に育む大学ならではの課程に加え、デジタル化への対応にも取り組む。

京都市左京区の山裾にある学舎。ストーリーマンガコースのさそうあきら専任教授(58)が2年生に実習を行っていた。学生一人一人を回り、物語の展開の仕方を丁寧に助言していく。同コースでは現役作家も教壇に立ち、漫画家として必要な力を学生に身に付けさせている。さそう教授も「神童」「マエストロ」などの代表作を持つベテランだ。
「絵がうまかったら描けるとか、漫画はそんな単純なものじゃない」。アイデアの発想力、登場人物に迫真性を与えるための取材力も重要と強調。さまざまな能力を4年かけてじっくり育てる大学教育の意義を語る。
漫画の世界は近年、変化が著しい。多くの人が雑誌などの紙媒体ではなくスマートフォンやタブレット端末で読むようになった。無名の人が会員制交流サイト(SNS)などで発表した作品が一躍話題になることも。その変化を踏まえ、2017年には「新世代マンガコース」が設立された。
ネット発信にたけた作家らを講師に招き、SNSでどうしたら「バズる(広く拡散する)」か、どう「炎上」を避けるかなど、デジタル表現上の作法を伝授。作品制作に生かせるノウハウを重点的に教える。
06年に開設されたマンガ学部の大橋雅央学部長(46)は「紙媒体や出版社に依存せずとも生計を立てられることに重きを置いている」。セルフプロデュースが可能な人材の育成を目指す。
ただ、学生には転換期ならではの困惑もあるようだ。漫画サイトやアプリは無料で読める作品が多い分、原稿料も安くなりがちだからだ。
さそう教授のゼミに所属する4年生の林亜耶奈さん(21)は「デジタル半分、アナログ半分が理想」と語る。中高生時代は「紙は時代遅れ」とパソコンで作画していたが、大学で紙に描く実習を多く受け「線のかすれはデジタルでは再現できない。紙の方が実力が付く」と思うようになった。
今年、大手出版社の漫画サイトで賞を獲得。プロとして歩み始める。「ネットだけでは食べていけない不安がある。紙の単行本による印税収入はやはり大事」と冷静に現実を見据えている。
発表の場が多様化しても「作品を描ききる力は普遍的に必要」と、さそう教授。時代に即した制作力と発信力を育てるべく、試行錯誤は続く。

◎文化的な地位

京都精華大国際マンガ研究センター研究員の伊藤遊さん(45)によると、2000年代初めごろから日本で漫画を巡る環境に変化が表れた。国が「知的財産立国」の方針を強く打ち出す中で、海外で人気の高い漫画・アニメ分野は文化政策で重視され始めたという。
「漫画研究がアカデミズムの中でやりやすくなり、文化としての漫画の価値も上がった」。01年には日本マンガ学会が設立。近年は、漫画展が美術館で開かれるのも当たり前のようになった。
漫画が文化的な地位を確立する上で、学問としての漫画研究の発展が重要と解説する一方で、日本で漫画文化が一層深化するためには、「より深く、より面白く漫画を読むための読者教育が必要」とも語る。

 

2019年9月4日

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